田崎さんのパリ紀行−10

1999-Nov

ギャルリー・ラファイエット 1
〜トイレ狂想曲〜


ハ真B影は早々に切り上げ(何しろ寒い),一行は今日の最終目的地のパリ最大のデパート(今日 はパリ最大の所ばかりに行っているような・・・)ギャルリー・ラファイエットへと向かった。 で,このデパートの最寄り駅は,これまた失念してしまった。人様の後に付いて歩いても場所を覚 えないというのは全く持って本当のことだ。

ラファイエットはオペラ座の裏側にあり,お隣はオ・プランタンという,パリ(というか世界)で 最初にできたデパートが並んでいる。東京だと銀座に当たるだろうこの界隈は,週末のせいかもあ ってか人が大勢集まっていた。

最寄り駅とラファイエットは地下通路で直結しており,看板どおり地下通路の階段を上るともうデ パートの中だった。さすがにフロアは広い。一階が化粧品売場という のはどこのデパートも同じようで,ブランド店がずらりと軒を連ねている。が,ブランド物には興 味のない一行はそのままインフォメーションを目wした。そこに日本語の案内が置いてあるのでそ れを見て小物や文具類がおいてあるフロアを探すZ段だった。しかし,インフォメより前にもっと 差し迫ったモノを探さなければならなかった。

トイレである。
寒くなるとトイレが近くなるのは自然な生理現象だ。そして今の今まで寒空の下を歩き回っていた 一行が一斉にトイレに行きたくなったとしても何ら不v議はなかった。 だが,初めてのデパートでトイレを探すのは容易なことではない。おまけに広い。果たして一階に トイレがあるのかも定かではない。

エレベーター横の表ヲを見ても店の名前ばまりでトイレの有無はわからなかった。店内見回しても それらしい表ヲは見当たらない。しかもこういう桙ノ限って店員らしき人も見当たらない。

トイレは何処に。
心理的に切羽詰まると何故か肉体的にも切羽詰まるもので,いよいよトイレの必要性を感じてくる。 このままじゃあ,あかん!とにかくトイレがフロアのど真ん中にあるはずが ない。端を一周すれば見つかるはずだ。

人海戦術には少々人数が足りないが,阨ェけしてトイレを探す。 そして,遂に「あったよ」という天gのような声が。(大げさな) 友人Oの妹さんがデパートの片隅に設置されたトイレを発見し,一行は事なきを得たのだった。

トイレといえば外国では使用するのにチップを要求されることが多い。パリでもトイレチップは必 要だ。入り口あたりにトイレおばさんなる人が陣謔チてチップを要求するのだ。しかし,美術館や ホテル,デパートではトイレおばさんを見掛けることはほとんどない。ラファイエットでもトイレ おばさんはいなかった。この旅行でわたしがトイレチップを払わされたのは,唯一,ベルサイユだ けであった。値段は,少々記憶が曖昧なのだが確か2フラン50だった。(日本円で約50円) 果たして各国にいるトイレおばさん(もしくはおじさん)達がこのチップだけで生活しているのか, 疑問に思うところである。



ギャルリー・ラファイエット 2
〜モンブラン恋歌〜


トイレで一息ついた後は,本当の休憩を入れることにした。もうお昼はとっくに回っており,昼食 というよりはお茶の時間になっていた。インフォメーションで手に入れた日本語案内には サンドウィッチ屋なども載っていたが,ラファイエットでの休憩なら,大抵のガイドブックに載っ ている「アンジェリーナ」へ行くのが正しい日本人観光客と言えるだろう。(ちなみに,このお店 は日本にも支店がある。

後日、ケーキだけの店頭売りだったが、新宿の高島屋で発見した) というわけでエスカレーターで5階まで上り,地上階から7階までの吹き抜けになっているホール に飾られたけばけばしいクリスマスツリーを横目に見ながら,フロア奥に陣謔チているアンジェリ ーナへと向かった。

半だ円形のオープンフロアは,壁などの飾りや柱の飾りに金が多用された曲線の装飾でちょっとお 貴族様っぽい雰囲気。有名店だけあってフロアの中に所狭しと並べられたテーブルは,ほぼ満席状 態。しかし,昨日のカフェ・マルリーを逃しただけに今日のアンジェリーナはゆずれない。

ギャルソンに合図をしてお茶をしたいと無言で訴える。幸いにも奥のテーブル席が空いていたので 問題なく席を確保できた。(二方の壁が鏡張りの成金趣味状態だったのにはちょっと驚いたが。) うやうやしく差し出されたメニューからわたしが選んだのは,ここのスペシャリテ(=店ご自慢の 一品)であるモンブランだ。お昼も兼ねてなのでついでにサラダも頼む。

ケーキとサラダの妙な取り合わせになったが、この際やむを得まい。友人Oはクロックムッシュを, 母上と妹さんは友人Oの助言でクロックマダムを注文。注文品が来るまで,ちょっと周りの客を観察する が,りは見事にカップルだらけ。ううむ、さすがはパリ。 そして隣の若いカップルのもとにもモンブランが運ばれてきた。

でかい。
日本のケーキがゴルフボールサイズだとしたら、これはソフトボール以上の大きさはあるだろうか。 いくら何でも大き過ぎはしないか?まあ、しかし大きさはともかくそれを二人で仲良 くつつく図は何ともほほえましい。

やがてわたし達のテーブルにもそのモンブランが登場した。獅オに自分の握り拳とサイズを比較し たらやはりモンブランが勝ってしまった。恐るべし、モンブラン! ちなみに味は和菓子のようで なかなか日本人好みではないかと思う。

だが、その後それ以上に恐るべきモノがテーブルに運ばれてきたのだ。その名もクロックマダム。 チーズハムサンド焼きパン(=クロックムッシュ)に目玉焼きが乗っかったもの、というのが友人O の説明だったのだが、上に乗っかってきたのは卵は卵でもスクランブルエッグ。それも量が半端じ ゃあ、ない。直径21センチほどの皿いっぱいのスクランブルエッグ(軽く卵3個分)はメインの はずのパンを完全に覆い隠していた。

この大皿の登場に軽食のつもりで頼んだ友人Oの母上と妹さんから悲鳴にも似た叫びが上がったの は言うまでもなかった。卵は一日に一個。摂りすぎはコレステロール値悪 化の原因になります、なんてフランス人は言われたことがないのだろうか。この様qではないんだ ろうなぁ、きっと。

そしてとどめとばかりに、わたしの前に平皿に山と盛られた菜っぱのサラダが登場したのだった。

各々に割り当てられた皿の中身を黙々と平らげる。そんな一行の隣にまた新たなカップルが案内され てきた。カップルのテーブルに運ばれてきたのはコーラと紅茶とモンブランだった。

ううむ、やはりモンブランの人気は高いようだ。と何気に見ていたら、女の方がいきなりモンブラ ンを突き崩し始めた。スクランブルエッグを作るときでもここまでかき混ぜないだろう。女のフォ ーク攻撃にモンブランは、もはや原型を留めていなかった。そして女はその元モンブランを男の前へ押しやった。

これは、もしかしなくても、喧嘩?わたしの正面に位置するテーブルで繰り広げられ る展開に、野次馬根性でことの成り行きを見守る。女のモンブラン攻撃に男はしばし無言で抵抗して いたが、あきらめたようにそれを口へ運んだ。だが女はそれで許す気はなかった。今度はコーラに 塩を振り入れ始めたのだ。塩は軽く小さじ2杯分は振り入れられた。この様qだとタバスコでもあ ればそれも入れたに違いない。

塩入コーラを差し出された男はただ黙ってコーラをかき混ぜる。が、さすがにそのコーラを飲むほ ど悪いとはおもっていなかったのか、結局コーラは手つかずのまま、Mの上で土砂崩れの現場を再 現したかのようなモンブランとともにテーブルに謔闔cされたのだった。

半分ほど食べられたモンブランが誠意の証というところだろうか。この後、この男女の間に新たなる展開があったか どうかは定かではない。


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