山口さんの「さまよえるラム」−38

中東のお肉は食べられなかった紀行?


●うるわしき国、レバノン (この日からメモが殆どなく、うろ覚えの世界。

 
正確な数値等はHPにのせる前に調べなおします。 
雰囲気と印象だけ、忘れる前に書いておきます)

 レバノン入国後のドライブはとても快調だった。  
レバノンは、個人的に抱いていた中東のイメージ、「砂漠の彼方の煙突から煙がもくもく」とはほど遠かった。
道路の両脇に広がるのは、畑やビニールハウスなどが並ぶのどかな農村の景色。
東の彼方にはレバノ ン山脈が白っぽくうっすら見える。  

実はレバノンは中東随一のリゾート地として名高い。 国土は狭い(岐阜県くらい?←後で確認します)が、午前中は東のレバノン山脈でスキー、午後は西の地中 海で海水浴と、1日で冬夏のスポーツが両方楽しめる。
また、史跡や自然の観光名所も多い。中東の中でも物価が高いのは、観光客が多いのと、気候が良くて生活 水準が高いためだろう。  
国旗は、上部と下部5分の1ずつが赤、中間部が白、真ん中に杉の木が描かれている。
国土の豊かさを表す (と説明された気がする)赤と白に、国の名産品である「レバノン杉」の組み合わせ。
1回見れば必ず覚え られるグッドデザインだ。

 * * *

 
ほとんど予備知識もなく、さほど期待もせずに訪れたバールベックだったが、行って驚き見てびっくり!とても見応えがあった。  
バカでかい石でできたバカでかい神殿は、そばに近づくほどその大きさに圧倒される。
バールベックの顔 ともいえる六本柱は、直径約2m、高さは30m以上はある。
人間が登ったら、電信柱にとまったセミみたいに見えるだろう。  

現在でも天井まで30mはあるバッカス神殿は、今もまだ下に向けて掘り出し最中。
壁の所々についてい るしるしは、「某年某月、ここまで発掘した」という目印だ。
このペースだと、全部掘り出すまでにはまだ数十年か数百年かかかりそうである。  
大きさにも圧倒されるが、浮彫がまたすごい。
幅約 2mの渡り廊下の天井には、オリーブや人物の細かい細かい浮彫がびっしり施されている。
眺めていると首 が痛くなるので、5分以上は見ていられない。

間近で 見ることもじっくり見ることもかなわないとは、なんとも贅沢な芸術作品だ。  
天井の一部の石が1つ廊下に置いてあったので彫刻を間近で見ることもできたが、近くで見ると、その精密さがより分かった。
(ただ、中国には一歩負けるかも 知れないかも。by台湾帰り)。

なお、天井の石の大 きさは、事務机4個分位はあった。
これが落ちてきた ら、下にいる人は、象に踏まれたカエルよりも平たくぺっちゃんこになるに違いない。

 * * *

 観光終、バスで昼食のレストランに向かう途中の景色がこれまた大変素晴らしかった。
午後の光が溢れる 広々とした大地、背の高い木立と畑地を吹き抜けるそよ風、飲めそうなほどに澄み切った路傍のせせらぎ。
夏の北海道の、最も美しい景色を彷彿とさせる。  

これほどの美しい土地、そう簡単に諦められるものではない。
なるほど、いつまで経っても中東戦争が繰 り返されるわけだ。
景色を見つつ、思わず納得してし まった。

 * * *

 昼食は、マスの泳ぐ人口池が併設された、屋根付き屋外レストランでとった。
レバノン料理は、中東で最 もおいしいことで知られている。
テーブルいっぱいに 置かれた前菜は10種類ほどあり、いつもより多かった。
辛系、甘系、酸味系と味のバリエーションも豊かで、なるほど、今までで一番おいしい気がする。
中に は剪定した若枝みたいなものや見知らぬ香草もあったが、どんなに妙ちくりんなものでも、食べてみるとなかなか。
さすがは中東一の美食の国だけある。  

野菜はここでも豪快で、トマトやキュウリや生ピーマンや葉レタスが、丸ごと大皿に盛ってあった。
そこ には、静物画的な美しさがある。その上、コックは調理が楽で、食べる人には切り分ける楽しみがあり、か つ好きな量だけとることができる。この豪快さに慣れてくると、一人分ずつ切って盛りつけてあるのは、何だか物足りない気がしてくる。
前菜だけでもお腹が膨れた頃に、メインであるマスの唐揚げが運ばれてきた。
一人分は丸ごと一匹。 「もう前菜だけでお腹いっぱい!」 そう言いながら、ほとんどの人は結局は全部平らげていた。
とれたての材料で、シンプルが味付けがいいからだろう。
やはりさすがは中東一の美食の国だ。  

このように、評判通りにおいしいレバノン料理だったが、最後に供された締めくくりのレバノンコーヒー にまさる印象を残すものは無い。それは、おちょこサイズのデミタスカップに入った、濃い色のどろっとし た液体だ。  

カップが鼻先15cmまで迫ったところで、手が止まった。
かつて嗅いだことのない、形容しがたい異 臭が漂ってきたからだ。
強いて言えば、焦げの香りと 生のコーヒー豆の青臭さが混じった漢方薬とでもいおうか。  

でも、料理は全部美味しかったしなあ。気を取り直して一口なめてみた。

「ぐ、ぐええええ〜〜!」  

香り通りの味は、かつて「これ以上まずいコーヒーは無い!」と確信したトルココーヒーから、 やすやすとワースト1の地位を奪い取ったのだった。
ただ、今思うと、砂糖を入れて飲んでみれば良かった。
いつもブラックで飲むのでついそのまま飲んでしまったが、現地の習慣に倣って液体と同量の砂糖を入れれば、全然味は変わるだろう。
機会があれば、勇気 を出して試してみたいと思う(誰かの次に)。



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