山口さんの「さまよえるラム」−31

中東のお肉は食べられなかった紀行?


●メイド・イン・ジャパン

 昼食は、うんちくおじさんと同席だった。
どんな話 題でも必ず何かを述べ論じるところから、その名が付いた人である。

「ええ、フィルムは冷蔵庫保管が常識ですよ。 で、それを急に外に出すと霜がつくから、段々と温度の高いところへ移さなあかんのですわ。でね、・・・」  

声が通るので、半径5mに居合わた人は誰でもその溢れ出る豊かな知識を拝聴することができる。
長さ1 5cmはあるレンズのカメラを2台たすきがけにし、サファリ風のベストに白い帽子という装備は、完璧主義を思わせる。
インテリでハイソな感じの奥さんも、 きっと選び抜いた女性(ひと)なのだろう。 
仕事は自営の商社で、今は息子に代替わりしたという。その彼に、こんな話を聞いた。


「ほら、こっちの人が頭に巻いてる布があるでしょ。 あれはわたしが売ってたんですよ」
「えっ、そうなんですか!?」
「ええ、30年位前ですかねえ。あれは日本製だったんですよ」
「へえええ〜、本当に!?!?」  

今は韓国製になったが、昔も今も全部密輸品なのだそうだ。  
それにしても、「カフィーヤ=アラブ人の伝統」と思っていたのに、実はメイド・イン・コリヤとは。
ま あ、雰囲気丸潰しの「韓国製」のラベルがないのは幸いだった。  
純朴な消費者諸君、商社マンの活躍には要注意である。



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