山口さんの「さまよえるラム」−8

中東のお肉は食べられなかった紀行?


●三人兄弟の墓、エラベルの墓、バール神殿
 (そのまんまのタイトル・・・)


 砂漠の中をひた走ること約3時間、11時頃バスはパルミラに到着した。このツアーの記念すべき最初の 観光地は、三人兄弟の墓とエラベルの墓である。

 ところで、遺跡の説明は、二段階で行われた。即ち、現地ガイドのウサムさんが英語で添乗員のアライさん に伝え、それをアライさんが日本語に訳すのである。

 アライさんの説明には大変好感が持てた。いつも最適な表現を心掛けているのがいい。さらに、全身から いい言葉を捻り出そうとしているかのような、大きな身振りがチャーミングでとても良い。それを見る度に 頭の中では「大きな栗の木の下で」の歌と踊りが浮かび、ほのぼのとした気分にさせられた。

 当たり添乗員に巡り合えて、本当に良かった。ありがとう、サンキュー、謝々、ダンケシェーン、ショク ラン、テシェキュルエドリム。

 前の旅行の珍(朕?)添乗員サンタ氏とついつい比べては、わたしは神・仏・アラー、その他この世のあ らゆる森羅万象を司る偉大な力に、感謝の言葉を並べ立てずにはいられなかった。

 さて、三人兄弟の墓は地下、エラベルの墓は地上4階建てだったが、内部の様子は似ていた。壁には、人 が一人丁度通れるほどの真っ直ぐな横穴がたくさん空いている。奥行きは4、5mしかない。埋もれた秘密 通路だろうか。入っていいものかどうかと覗き込んでいると、アライさんが言った。

「はい皆さん、そのお客さまが覗き込んでいる横穴はですね、遺体安置所です。壁の両側に階段状の浅い溝 がありますね。そこに板を渡して棚をつくり、そこに遺体を置いていたわけです」

 わたしは慌てて穴から離れた。霊感ゼロなので怖がる必要は全く無いのだが、それでも怖いものは怖い。 われながら不思議だ。 これらの墓には一族郎党が葬られていたという。 壁中に空いた横穴の数からすると、100人は軽く越える。壁一面見渡す限り、遺体だらけだったわけだ。うわー、こわこわ。

 エラベルの墓の屋上は、眺めが良いと評判である。登ると、周囲のクリーム色の砂の平原と、地中海沿岸 らしいからりと済んだ空の青さのコントラストが、鮮やかで美しかった。

 ただ、この辺りは風がとても強かった。帽子だけでなく、自分まで飛ばされそうな程だ。旅行中はずっと 帽子を押さえていないといけないだろう。写真は、頭を押さえたポーズだらけになるに違いない。 クジ、馬、ペナントレースの実績を見る限り、当たることの少ないわたしの予想。帽子の件も、結局は例 外にはならなかった。

 次に訪れたのはバール神殿。ローマ・ギリシャ様式の建築物である。ここで、ローマ・ギリシャ様式建築 物のレリーフ(浮彫)鑑賞における3つのキーポイントを挙げておこう。これさえ知っていれば、あなたは 友達の中で一番の「中東におけるローマ・ギリシャ様式建築のレリーフ通」になれるはずだ。

1.赤いもの、葡萄、卵・・・生命の象徴
2.緑のもの、オリーブ・・・平和の象徴
3.強い・大きい・明るいもの・・・神の象徴


 これらの彫刻の多さを見るにつけ、数千年の時と場所と民族の隔てがあっても、「LOVE&PEACE」 を願う気持は同じだなあ、と思わされた。たった2つの目標達成に、人類はあと何年かかるのやら。

 説明が一通り終わると、20分あまりの自由時間が設けられた。一同はより良い写真スポットを求め、各 々好きな場所に散っていった。わたしも同様、穴場を探してカメラを覗きながら、神殿の裏のほうにぷらぷ らと歩いて行った。

 そして、知らず知らず女郎蜘蛛の網に踏み込んでしまったのだ。



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